

ALCの耐久性を生かす
耐久性に優れるALCだが、ALCパネルそのものは高い耐久性を有しているものの、ALCパネルに施されている塗装や目地のシーリングなどは、同様の耐久性を有しているわけではない。したがって、ALC外壁のメンテナンスは欠かせないのだが、大半の既存建築のALC外壁は、竣工以降そのまま放置されているか、表面塗装の塗り替えなど美観のための改修がなされているのが現状である。
木造、鉄骨造に限らず既存建物の寿命が伸ばされていくなか、耐久性に優れるALCパネルの能力を最大限に発揮させるには、外壁の劣化状況に応じた適切なメンテナンスが欠かせない。ここでは、ALCメンテナンスの概要とその最新技術を紹介する。
3つのメンテナンス手法
ALC外壁のメンテナンスといっても、劣化や破損状況などに応じて、その内容は大きく異なる。基本的には以下の3点が主な内容と考えてよい。
1|シーリングのメンテナンス
ALCパネルのジョイントは、基本的にシーリングを打つことで納められている。しかし、シーリングは経年劣化するものであり、必要に応じて打替えや増打ちを行う必要がある[写真1・2]。ALCパネル外壁では、このシーリングが防水上大きな役割を担っているので、重要度の高いメンテナンスといえる。
写真1:破断したシーリング目地
写真2:破断したシーリングを除去し、新たにシーリングを打ち直している様子
2|塗膜のメンテナンス
塗装もシーリングと同様に紫外線を受け続けることで経年劣化が起こるものである。ほかの外装材にも共通することだが、塗膜がALCパネル本体やシーリングを保護する役割をもっているため、外装材を長持ちさせるうえで塗膜のメンテナンスは欠かせない。ALCメーカーのクリオンでは、既存塗膜の状況に応じて重ね塗り工法を選択できる「クリオリーナ塗装システム」をラインナップしている。なお、既存塗膜の劣化がひどく、重ね塗りが難しいと判断される場合は、既存塗膜を除去して、再度塗り直す必要がある。
3|不具合の補修など
長年にわたりメンテナンスが行われていない場合や厳しい使用環境にさらされている場合、そのほか偶発的な事故などによって、ALCパネルそのものに損傷や不具合が発生している可能性がある。
よく見られるのが、ALCパネルの素地や塗膜に発生する微細なひび割れだ[写真3・4]。この微細なひび割れは、そのままにせず、表面保護材などを素地や既存塗膜に直接塗布する必要がある。
また、コンクリート下地などでよく見られる白亜化(チョーキング)や膨れ、浮きなどが、ALCパネルの表面に見られることもある。コンクリート下地同様に素地調整などを行う必要がある[写真5~10]。
地震や、外壁が直接受けた衝撃、鉄筋の爆裂などでALCパネルが破損した場合、破損が軽微であれば、適切な補修によって対応できる。ただし、ひどく破損していれば、状況によっては張り替えを選択する。なお、現在のALC製品は意匠面や品質面で大きく向上しているので、破損に限らずコストや建物用途など諸条件によっては、張り替えを選択したほうがよりメリットを得られる場合もある。
写真3:ALC パネルの表面に発生した微細なひび割れ
写真4:ひび割れなどを補修する表面保護材の塗布
写真5・6:ALC パネルの表面に発生した白亜化(左)と膨れ(右)。コンクリートやセメント版によくみられる不具合はALCにも発生することがある
写真7~10:アスリートでALC外壁の再塗装と同時に施工した塗装部位。左上から屋根、軒天、ベランダ床、基礎立上り面。このほか、鉄製のドア枠・雨戸、樋、木材部分などにも対応する
メンテの質を高める専用資材
ここまで解説した3つのメンテナンスは、良心的な外壁改修工事では以前から行われているが、近年ALCメーカーがこの分野に参入し始めてから、メンテナンスの内容が大きくグレードアップしてきている。
ALCメーカーで共通しているのが、責任施工による高品質の診断・補修システムである。材料の特性を隅から隅まで知っているメーカーに蓄積された経験や技術、そしてこれらをフルに発揮し得る高い専門性をもつ人材によって、高品質のALCメンテナンスが可能になった。
ALCメンテナンスに付随する外装全般を請け負う商品も出てきている。旭化成建材の商品「アスリート」は、屋根、バルコニー床、基礎立上り面など、外壁塗り替え工事に付随する部位の塗り替えも請け負う。外壁の塗り替え時の足場の有効利用や、外装を一体で塗り替えたいという消費者のニーズを捉えた意欲的な試みだ。
付加価値を与える専用塗料
メンテナンスといっても、ただ原状を回復するだけでなく、ALC外壁に新たな付加価値を与える製品も登場している。キーワードは、「低汚染」「高耐久」だ。
1|低汚染性
建物の不動産価値を考えるのであれば、外壁が汚れにくいというのは、性能上重要なポイントである。新築物件でも低汚染性(セルフクリーニング性)を付加した製品が盛んに使われるようになっているが、汚れが恒常化している既存建物であれば、その重要度はさらに高いといえる。ALCメーカー各社では、低汚染性を付加した専用塗料もラインナップしている。
2|高耐久性
シリコーン・フッ素樹脂塗料やセラミック塗料など、耐久性・耐侯性に優れるトップコートが中低層建築にも使われるようになってきている。下地を長期間保護し、メンテナンスの頻度を極力抑えるこうした塗料の性能は、ALCメンテナンスにおいても同様に必要なものであり、ALCメーカー各社は専用の高性能のトップコートをラインナップしている。
そのほか、防カビ性・防藻性を付与した塗料、環境負荷の少ない水系塗料なども、ALC用に開発されている。
意匠性を向上させる製品群
付加価値は性能面に留まらない。各社ともメンテナンス用に開発した、豊富なカラーやテクスチュアの塗り材をそろえている。
また、塗料ではないが、意匠性を向上させるという意味で特筆すべきものとして、旭化成建材の半乾式タイル工法「タイルでR」が挙げられる[写真11~13]。これは、既存ALC外壁の上から本格タイルを施工するというもの。同製品用に開発された乾式の下地が、既存外壁の挙動を吸収する仕組みをもつため、ALCパネルの割付けに応じた目地をタイル面に設ける必要がない。また、市販の二丁掛けタイルなどを取り付けられるため、高級感のある意匠を表現できる。
建物の長寿命化とともに、その重要性が増してきているALCメンテナンス。専用材料や高機能材料、デザイン性の高い製品などがラインナップされてきたことで、不動産価値や建物性能の面でもその質をグレードアップする仕組みが整備されつつあるといえよう。
写真11 :施工されたタイルと専用下地材「タイルキャッチャー」
写真12 :タイル表面のテクスチュア。質感の優れた2丁掛けタイルなどが使える
写真13 : ALC 下地に「タイルでR」でタイル張りを施した外壁。新築のタイル張り仕上げと見間違えるほどの外観に仕上げられている
(写真提供:旭化成建材、クリオン)




