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建材・設備の最前線

主要輸入木材は、今も昔もカナダから

【THEME-06】 遡れば明治時代 北米材と日本の100年

日本では手に入りにくい木材を調達したり、量を確保することで価格の安定化を図ることが、木材を輸入する目的である。特にカナダからは、豊富な森林資源を背景に積極的な輸入が行われ[写真1・2]、明治期から今日に至るまで、日本の住宅との関わりは深い。ここでは、そんなカナダ材と日本の住宅の関係をたどってみたい。


写真1・2

写真1・2:カナダでは広大な森林を背景に、古くから林産業が栄えた。大径木が育つのも100 年以上前から優れた森林経営がなされてきた証拠


関東大震災で大量輸入


カナダ材は、アメリカ材とともに北米材と呼ばれ、ひとくくりで扱われることが多い[図]。北米から木材がもたらされたのは、江戸時代末期にペリー提督が幕府に献上したベイマツ(オレゴンパインと呼ばれた)の板が最初とされる[表]。本格的な輸入は明治に入ってからで、造船用として明治10年ごろからベイマツが、明治14~15年から板材のベイスギ(ウェスタンレッドシダー[※])が輸入されていたなど諸説あるが、いずれにしても北米から木材輸入が開始されて、すでに100年以上が経過していることになる。


図・2006年度主要外国産製材品の輸入量、表・北米材にまつわる出来事

カナダ材がひときわ存在感を示したのが、大正12年に発生した関東大震災の復興材としての緊急輸入である。復興には大量の木材が必要とされたため、政府は輸入材を調達することを決定し、アメリカとカナダから木材を大量輸入する契約が結ばれた。これにより、北米材の高い供給能力が改めて認識されることとなった。
戦前の北米材輸入の中心はベイマツとベイスギ、そしてベイツガだった。なかでもベイマツは、日本では手に入りにくい長尺材として重宝され、造船や大規模木造建築に利用された。杭丸太としての利用も多く、旧丸の内ビルディング解体時に支持杭として利用されていたベイマツが出土したのは有名な話である。


[※]ウェスタンレッドシダーはヒノキ科ネズコ属だが、価格が高かった秋田スギの代替品として利用され、色が似ていたこともありベイスギと呼ばれるようになった


戦後の住宅ブームを支える


関東大震災以上に日本の家屋に甚大な被害を与えたのが太平洋戦争で、終戦直後の住宅不足は400万戸以上といわれる。建築資材としての木材需要は大きく、パルプや繊維(レーヨン)の原料としても大量に必要とされたため、木材資源の絶対的な不足が問題となった。しかし、大戦をはさんだ乱伐によって日本の山林は疲弊しており、木材の価格も不安定だったため、増大する国内の需要に応え、日本の山林を育成し木材価格を安定させるには、海外からの輸入が不可欠だった。


高度経済成長期に入ると、住宅着工が増加し、木材の需要はさらに拡大した。昭和35~36年にかけて国産材の価格が急騰し、政府は木材価格の安定化のために外材の輸入量を増加。以後、北米材は日本の住宅ブームを支え、木材不足の解消に寄与することになる。


なかでも大正期以来、重要な役割を果たしたのが、カナダを中心に現地工場で製材されるベイツガだった。カナダのブリティッシュ・コロンビア州(以下、BC州)では、丸太の輸出禁止を受けて、製材品の輸出に積極的に取り組み始めたころである。戦後初の輸入が行われた昭和27年以降、ベイツガは安価で安定して供給される角材として柱などに大量利用されてきた。


枠組壁工法の与えた影響


木材の供給にとどまらず、技術の提供も盛んに行われた。昭和49年には枠組壁工法(ツーバイフォー工法)がオープン化され、耐火や断熱、防湿技術など、北米で膨大な研究費を費やして蓄積されてきた技術が、日本の木造建築に大きな影響を与えた。当時、木造建築は火災に弱いとされ冷遇されていたが、不燃材料を用いたツーバイフォー住宅が火災に強いことが証明されたことで、木造建築の研究が活気づいた。その後の木造3階建て共同住宅や準耐火木造建築、耐火構造認定に至る、木造建築の技術革新と質的向上に貢献したのである。


こうした流れのなかで、カナダでは204材が積極的に出荷され、SPF(スプルース・パイン・ファー)の人工乾燥材(KD材)がその大半を占めるようになった。日本の住宅にKD材が本格導入されたのは、これが初めてのことだった。204材は、現在でも最も安く手に入る4面プレナー掛けKD材の1つであり、最近では軸組構法の垂木や根太などに活用する動きも見られる。これらの材については、日本市場向けに特殊な選別基準「Jグレード」が設けられ、生産工程でそれをクリアしたものだけを抜き取って出荷するという細かな作業が行われている。


ベイツガの品質向上も進められた。ベイツガは、木材全般が未乾燥材だった時代に低価格住宅に大量に使われたため、逆に悪いイメージが付きまとうという皮肉な結果となった。その後、製材技術の向上や品質管理の徹底が図られ、平成13年にはカナダツガE120の選別基準を策定、強度に関する国土交通大臣認定も取得した。


エコ×上質 カナダの建材


現在、カナダから日本に輸出されている主な住宅関連製品を紹介しよう。


1|製材品

204材(SPF)を筆頭に、軸組構法向け構造材のカナダツガやベイマツ、ベイヒバ、外構や外装に多く使用されるウェスタンレッドシダーなどがある。雨量が多いBC州沿岸地域では大径木が生育し、代表的な5樹種(カナダツガ、ベイマツ、スプルース、ベイヒバ、ウェスタンレドシダー)の征目や長尺材が生産される。


2|2次加工品

木材を加工した、サッシ、キッチンキャビネット、階段、フローリング、玄関・内装ドア、モールディングなどが生産される[写真3~5]。良質な木材が入手しやすいことから、2次加工産業が発達した。熟練した職人の技から最新のコンピュータ制御による加工まで、優れた生産技術を誇る。ベイマツ、ヘムロック(カナダツガの別称)、ウェスタンレッドシダー、パイン、ウェスタンコーストメープルなど、幅広い樹種が利用されている。


3|エンジニアードウッド

カナダの合板は、シックハウス問題が浮上する前から、ノンホルムアルデヒドを実現していたことで知られている。昨今では、同じ構造用面材としてOSBも需要を増やしている。また、小屋組の合理化や大架構を204材で実現する木製トラスもカナダの技術である。これらの製品は木材資源の有効活用にもつながるため、今後ますます利用が拡大するものと期待されている。


4|パッケージ住宅

カナダの建築様式をキット化したもの。太い丸太が採れるカナダならではのログハウス[写真6]や、大断面材を使ったティンバーフレームがある。いずれも設計の自由度が高く、日本の生活習慣に合わせてアレンジできる。


5|家具・プロダクト

バンクーバーを拠点に活躍するカナダ人の家具・インテリアデザイナーが注目を集めている。豊かな自然環境や、日頃から身近に触れられる木材が発想の原点になっており、作品にも積極的に木材が使われている[写真7]


以上見てきたように、北米材は国産材を質的・量的に補完する役割を期待され、高度経済成長期の住宅ブームの時代からは主要な木材として大量に輸入されてきた。お互いに木造建築が多い国という関係から、技術的な交流も盛んに行われている。
地球温暖化対策が最重要課題となった今、CO2排出量削減に木材の活用は不可欠であり、持続可能な森林経営から産出されるカナダ材の重要性はますます認識されることだろう。(出町正義)


写真3~7

写真3:木製のキッチンキャビネット。日本向けのサイズはもちろん、F☆☆☆☆にも対応
写真4:断熱効果の高い木製ドアは、木の質感が重厚感を与える
写真5:ムクの単板を貼った集成単板パネリング材もある。写真は天井に採用した例
写真6:大径木が採れるカナダならではのログハウス
写真7:BC州出身のデザイナーによるアルダーの小径木を用いたブロック。「100 % Design Tokyo 2007」にも出展された



写真:Forestry Innovation Investment http://www.bcforestinformation.com(写真1)


参考文献:『木造住宅における技術革新』(水谷達郎著)、『杉山英男の語り伝え』(杉山英男著)、『米材百年史』(日本米材協議会)、『二十年のあゆみ』(日本木材輸入協会)、『五十年のあゆみ』(日本木材輸入協会)

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