
先ごろ、(社)日本建築構造技術者協会(JSCA)は、2008年のJSCA賞を発表した。同賞は、構造技術者の活動を掲示するために設立された、国内の建築構造分野での唯一の顕彰制度。独自性があり、波及効果が大きい構造設計手法を用いた設計者が対象となる。今回は、31歳の城所氏をはじめ、40歳未満が対象となる新人賞に3名選ばれ、若手の活躍が目立つ結果となった。
「Nicolas G. Hayek Center(ニコラス・G・ハイエックセンター)」は、スウォッチグループのショールームやオフィスなどからなる地上14階、地下2階の複合施設。
特筆すべきは、新型の質量型制震工法(Self Mass Damper:SMD)。上層部の床組を部分的に主体構造から切り離し、床の自重を重りとして利用するシステムである。この工法により、施主からの高い耐震性能要求に応える構造システムを実現した。このほか、構造架構を兼ねた緩やかにうねる屋根のオブジェクトなど、斬新な建築コンセプトを実現するためのアイデアや取り組む姿勢、作品の高い完成度が評価された。
写真1・2:「ニコラス・G・ハイエックセンター」(撮影:Hiroyuki Hirai)
「イグレック」は地上12階の集合住宅。
高さ40m、長辺方向16.8m、短辺方向9.7mの長楕円形という特徴的な形状を、「CFTフラットプレート免震構造」によって支えている。これは直径80mmのCFT(コンクリート充填鋼管構造)柱4本と、500mmのRCスラブの梁がない純ラーメン構造。構造全体をRC系としスラブを厚くすることで風揺れに対する居住性を確保した。また、免震部材にオイルダンパーを採用することで、地震にも対応できる免震構造とした。このような工夫により、意匠・構造のさまざまな問題を解決している。
写真3・4:「イグレック」(撮影:堀内正治)
「大分運転免許センター」は地上4階の施設。
プレート状の薄型鉄骨格子梁とランダムに配した細径柱からなる、幅60m、奥行36m、天井高さ8mのロビー空間が特徴的。ホール屋根面は、厚さ60mmの長尺木製面材(ラミネーテッドストランドランバー:LSL材)を採用することで剛性を確保している。さらに、構造材である格子梁とLSL材を露出させることで高い意匠性を実現している。
写真5・6:「大分運転免許センター」(撮影:岡本公二)
「武蔵野市防災・安全センター」は地上8階の防災拠点施設。
旧建築基準法下で増築を考慮して建設されていたSRC造2階建の上部に、免震層を介して5階分をS造で増築した。免震層における免震部材の接合部ディテールを工夫し、増築部分を軽量なS造とすることで既存部分の補強を最小限にとどめ、建物を使いながらの工事を可能とした。
写真7・8:「武蔵野市防災・安全センター」(撮影:三輪晃久写真研究所)

