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ニュース&トピックス

JPタワーの完成予想図

写真1:JPタワーの完成予想図。
ガラス張りの外観デザインは、米国人建築家
ヘルムート・ヤーン氏による
(日本郵政グループのプレスリリースより)

日本郵政グループは6月25日、東京中央郵便局(千代田区丸の内)の再整備計画を発表した。これによって、「経営基盤の強化並びに社会と地域の発展に資する」ことを目的に、地上38階建ての超高層ビル「JPタワー(仮称)」の建設が、2011年度中の竣工をめざして進められる。


同敷地に建つ現在の局舎は昭和初期の竣工で、日本の近代建築の傑作として知られており、ここ数年、建物保存の呼びかけがさまざまな方面からなされていたが、今回の発表によって、建て替え計画がより具体的に動き出した格好だ。
なお、この発表を受け、千代田区議会は7月4日、全会一致で現局舎の保存要望書を日本郵政に提出している。


現局舎は、建築家・吉田鉄郎(1894-1956)を中心とする逓信省経理局営繕課によって設計された。その建築史的評価はすこぶる高く、近代建築の記録・保存を目的とした国際組織DOCOMOMO(ドコモモ)の日本支部が選出した近代建築20選にも含まれている。



現在の東京中央郵便局

写真2:現在の東京中央郵便局。長大なファサードは、二丁掛けタイルの寸法を
モジュールとして、破綻なくまとめられている

建物は東京駅前の広場に面し、設計に当たっては首都東京の「顔」にふさわしいデザインが求められた。それに対して吉田は、当時最新だった近代建築の手法を使って記念性を表現するのに成功した。変形五角形の独立街区という敷地や当時の31メートルの高さ制限、仕分け作業のために耐震壁のない大空間が求められるなどの難しい条件のなかで、内部の機能を満たし、かつそこで設定した柱間や諸機能の配置、動線の処理などに対応して、外壁面の開口部や柱を構成し、屈曲した長大なファサードを整然と引き締まったものに仕上げている。こうしたシンプルな要素を用いて内部と外部を一体的に捉える設計は、まさにモダニズムの手法といえる。


現局舎については、10年ほど前から再開発の話が浮上しており、それに対して(社)日本建築学会、(社)日本建築家協会、「東京中央郵便局を重要文化財にする会」などから、建物の保存活用、文化財登録の働きかけがされていた。また、森山眞弓氏、平沢勝栄氏、河村たかし氏ら国会議員による超党派の団体も、昨年6月、日本郵政公社に対して、国の重要文化財登録への同意要請を含む保存要望書を提出している。先月も、19日に日本建築学会から、25日に日本建築家協会から、それぞれ保存に関する要望書が出されたところだった。



現在の東京駅前広場

写真3:現在の東京駅前広場。左に東京駅、右に東京中央郵便局。
重要文化財である東京駅丸ノ内本屋(竣工1914年)は、創建時の姿に戻すべく、
現在、復原工事が行われている

こうした保存運動の気運の高まりに対し、日本郵政グループでも現局舎の歴史的・文化的価値を認め、外部の有識者による歴史検討委員会を立ち上げるなどして、現状の全面的な保存も視野に入れた検討がされてきた経緯がある。今回の発表では、現局舎について「できる限り保存、再現する」とし、再整備計画では、現在の地上5階建ての外観ほぼすべてが、ガラス張りである超高層の低層部分にあしらわれることになっている。新ビルの1階には郵便局の窓口が置かれるが、日本郵政グループは民営化後の経営基盤の強化を図るため、不動産業務を推進する方針を打ち出しており、建物の主用途は賃貸の事務オフィスとなる。今後、官報公告により、今年10月頃に入札・工事業者の決定がされる予定。


なお、同じく吉田鉄郎の設計による「大阪中央郵便局」(竣工1939年)も、同様に再整備計画の検討とそれに対する保存運動がされており、こちらの動向にも注目したい。



日本建築学会やDOCOMOMO Japanで近代建築の保存活動に携わる
東京工業大学大学院・藤岡洋保教授の談話:


「現局舎は戦前の日本の近代建築家が最も高く評価したもので、難しい与条件に対して巧みなデザインで応えた傑作です。今回の提案は、駅前からの『景観』にしか主な価値を見ておらず、この建物の歴史的・建築的価値を矮小化するものです。

竣工当初の現局舎

写真4:竣工当初の現局舎。変形五角形の独立街区であることが見てとれる。
写真右下には東京駅舎(東海大学出版会刊『吉田鉄郎建築作品集』より)

『保存』では、古い建物の全部または一部をそのまま残せばいいというものではなく、その歴史的・建築的価値を発見・継承しながら、新しい機能や価値を付け加えていくことが重要で、いい『建築のあり方』が求められます。


今回提案のものはそれに応え得るものではなく、胸を張って『保存』といえるようなものではありませんし、吉田鉄郎を冒涜するものです。まず建物全体の保存を前提に、重要文化財に指定してその価値をオーソライズしたうえで、未利用容積の移転や道路などの将来計画に対応することを検討すべきです。」



<建築データ>
名称 JPタワー(仮称)
所在 東京都千代田区丸の内2-7-2
設計 三菱地所設計+ヘルムート・ヤーン
竣工 2011年度(予定)
主な用途 郵便局(窓口)、公共貢献施設、商業施設、事務オフィス(賃貸)
敷地面積 約11,780平方メートル
延床面積 約215,000平方メートル
規模 地上38階・地下4階・塔屋3階
構造 S造、一部RC造
※今後の検討にともない変更の可能性あり


<既存建築データ>
設計 吉田鉄郎(逓信省経理局営繕課)
施工 大倉土木(現・大成建設)
竣工 1931年(1961年増築)
延床面積 約42,000平方メートル
規模 地上5階・地下1階・塔屋1階
構造 SRC造